普段仕事をしている中での出来事や感じたことを日誌で更新していきたいと思っています。
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◆第21話 2007.1.29 稲田高架橋現場見学会に参加して
茨城県建築士会久慈支部
石橋 磨事
 我が国は道路や鉄道を含む目覚しい社会資本整備の発展を遂げていますが、合わせて問題となっている事柄として、慢性的な渋滞となる道路の交差点や開かずの踏み切り等が挙げられます。それらの平面的交差を立体交差にすることにより、問題を解消するわけですが、その手法には、上を通すオーバーパスと下を通すアンダーパスの2通りがあるのは、言うまでもありません。
 この6号国道の稲田交差点がワーゲン施工によるPC橋でオーバーパスにより計画・施工されている現場を見学させていただき、色々と勉強になりました。その中でも三つの事柄は特に強い関心を抱きました。それらは全く私の勝手な思い込みによるものです。事実とかけはなれている場合、ご了承ください。
 まず一つに立体分差化がアンダーパスでなくオーバーパスであることです。一般的にオーバーパスは安価で短期間に施工できる立体交差化の方法とされています。反対にアンダーパスは堀削や山留支保工等に手間がかかるため長時間の施工となり、その結果高価になります。さらに完成後も雨水のポンプアップなどのランニングコストにもかなり費用を必要とします。昨今、社会資本整備を進める上で、費用対効果、又はライフサイクルコストなども思案しなければならない状況では、あまり好まれる手段とは言えません。にもかかわらずアンダーパスが多用されていることは、オーバーパスにおける日照権や騒音問題発生が大きな由縁と考えられます。
そういった実状の中で、この工事がオーバーパス採用となっているのは、周辺に住宅地が少なく工場等が隣立している状況によるものでしょう。
 二つ目になぜ大スパンのPC桁などによる一般的な方法でなかったのかと考えます。説明の中で、この工法は山岳地帯の道路橋などで数多く実績があり、確立された工法とのお活がありました。その確立された工法だからこそ、交通量が多く交通規制をかけることが厳しい道路直上での採用になったのでしょうが、それにしても一般的工法でないように思われます。この界隈の以たような土木工事の例として、水戸の香梅トンネルが挙げられます。このトンネルは、山岳トンネルですでに主流となっているNATM(ナトム)工法を二つの補助工法を併用することにより都市NATM工法と称して施工した技術的に高度なトンネルです。ここでもやはり山岳部で確立されているNATMだからこそ、失敗の許されない都市部での採用になったのでしょうが、やはり一般的工法ではありません。さらに話がそれますが、土木工学は別名経験工学とも言われ、実績を積みながら複数の補助的工法を復合して必要とされる悪条件下で採用され施工するケースが多いようです。ということはこの工事でも、それら発展的な経過の中で採用する工法となったわけで、当然第三者から見れば一般的には見えないはずです。しかしながら、土木技術向上のためにはこの周辺環境でこの工法により施工することが必要なことであるようにも思われます。
 三つ目に交通量多い6号国道直上の施工が挙げられます。見学会では、構造的技術に関する質問や関心が多くありましたが、そういった技術よりも実は、周辺の悪条件下で施工している技術の方がより難しくてよりエネルギーを多く消費する事柄なのではないでしょうか? 例えば、コンクリート打設をしているのにセメント水滴を一滴たりとも道路に落とさないというようなことは高度な技術と思われます。我々が、水戸〜日立間の6号国道を安心して通行できるのは、この工事に携わる皆さんの御苦労の賜物なのだと後になって痛感しました。我々の通常の仕事においても、華やかな事より、むしろ草の根的な目立ない地味な事を大切にすることに大きな意味があり、またそれが後々の信用を得るような気がしてなりません。

 最後に、今回の張出架設工・施工による稲田高架橋現場見学会に従業員と共に参加させていただき、我々も物事を進めるには柔軟な発想と創意工夫が、必要不可決と強く感じました。合わせて、綿密な施工計画と実施が安全施工・高品質施工につながることなのだということも実感し、自らの仕事にも反映せねばならないと考えています。とにかく、大変勉強になりました。企画運営された皆様や、迎えてくれた発注者・施工者の皆様、有義意な時間をありがとうございました。

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