普段仕事をしている中での出来事や感じたことを日誌で更新していきたいと思っています。
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◆第45話 2012.5.29 慈悲
平成24年5月
石橋 磨事
 世の中は益々便利になり、私たちは毎日、その恩恵を受けて生活させてもらっています。自宅に居ながらにして買い物ができるインターネットもその一つです。私も趣味のオートバイ部品購入・宿泊予約・小物の購入などに時々利用しています。しかし、それには、何か味気ない・物足りない・不安感が拭えません。お相手がどんな人なのか全くわからないのが一番の理由かと思われます。
 インターネットでの買い物で金額の小さいものはあまり気にしなくていいでしょうが、一生に一度だけであろう自宅建築工事やその周辺外構工事では疑問を感じます。よく耳にする話で、相見積で安いから、しかも値切らせて仕事を発注することを聞きますが、果たして良きものが作られるのでしょうか?
 そんな買い物で思い出深い事がありました。私の身近な人が家を数年前に購入した時の出来事です。購入したことは私にも嬉しいことであったので伺い、見学させてもらいました。とても広々した空間があり「いいな!」と思った反面、和室に何も無いことが気になりました。この辺りにこれが、ここにはこれを置いてなど。その一つの掛け軸にピンときました。偶然(必然?)なのでしょうが、その1ヶ月ほど前に偶々何種もの掛け軸を見せてもらう機会がありました。どれもボロボロだったので、値段は安価でした。私は石井先生(剣道の先生)からほとんどのものが再生できることを聞いていましたので、直ぐに掛け軸を借りてきて、その人に再生できる事などを説明し、お見せしたところ、何と、私が想像していた絵を選びました。そして、今はすっかりきれいに出来上がり飾られています。
 これも何かの縁かと思い、私も一つ買うこととしたところ、もう一つをくださると言うのです。その掛け軸は、さらに輪をかけてボロボロ状態で、その方がおっしゃるには、

「文中に水府と書かれており、水戸又は旧水府村を意味いているのでしょう。禅という言葉もあるので恐らくお坊さんが描かれたのでしょう。そんなわけで、その地元のお坊さんのためにも早く再生してあげたいのですが、どうですか?」

とのことでした。私の頭の中では購入した掛け軸を置き床の上に飾るイメージだったのですが、その一言で迷いが生じました。結果は数分後に

「解りました。せっかくですので、頂戴し、出来るだけ早く再生します。」

と答え、現在、すっかりきれいになった姿で飾られています。その文中には二文字大きめにかなり崩された書体(行書体?)で「慈悲」と書かれています。(恥ずかしながら、読めなかったし、意味も解らなかったのですが、石井先生が見た瞬間に教えてくれました。さすがとしかいいようがありません。)厳しさの中にもやさしさがあってそのやさしさは計り知れないほど大きな大きな愛情、敬い、感謝で満ち溢れている器のようなものであるそうです。
 私はその後、事ある毎にその掛け軸の下方に描かれている達磨さんをじっと見るようになりました。鬼のごとく厳しい表情をしているのですが、何度も見ているうちに、その瞳だけは優しさがあり、その達磨さんは慈悲の心が表現されているように見えてきました。」
 現在、挫けそうになったり、嫌なことがあったり、落ち込んだ時など、慈悲の心を思い出すよう努めつつあります。

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